導入事例 : 自立支援センターむく

USBメモリの大量廃棄時代に備えるため、錐(きり)による

物理破壊からUSBディスクシュレッダーでの上書き消去へ。

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会社情報

自立支援センターむくロゴ

会社名:特定非営利活動法人 自立支援センターむく
設立:2000年(平成12年)12月
所在地:東京都江戸川区小松川1-5-2 トニワンビル
職員数:約140名(PC工房:約20名) 2016年3月現在
利用者数:約2,000名(PC工房:約80名) 2016年3月現在
事業内容:グループホームや日中活動センターの運営、カウンセリング、就労支援、ヘルパー派遣などさまざまな形で障がい者の地域生活をサポート。就労支援に特化した施設「PC工房」では、一般就労につながる技術の習得を目的として、障がい者自身がコンピューターの再生作業やインターネット販売などを担当。
自立支援センターむくの「むく」とは、純粋無垢の「無垢」を誰もが読めるようにと、ひらがなで表しています。そして、そこには「ゼロ」からの出発とか、「けがれの無い」というような意味合いを持たせています。今ではNPO法人として、皆様のご理解をいただきながら頑張っていますが、前身は在宅障害者のパソコン支援を行う「ボランティア団体」として発足し、現在のNPO法人の「むく」の形へと進化していきました。制度の無い時代から、支援費制度、そして自立支援法へと流れは変わってきていますが、福祉を取り巻く環境は、いつの時代も困難が付きまといます。私たちは、その時代時代の先を読み、少しでもいい障害者支援が行えるようにと努力を続けていく使命を持ちたいと考えています。

muku01これまでUSBメモリのデータ消去は
物理破壊しかありませんでしたが、
導入後は、ソフト消去を選択肢の
1つに追加することができました。
選択肢が増えるということは
依頼する側にとってもメリットだと
思います。

写真右から
特定非営利活動法人 自立支援センターむく
PC工房 施設長 鈴木誠様
PC工房 職業指導員 平野正明様
理事長 木村利信様
PC工房 事務局 海老原由花様

今回の導入事例は、「ディスクシュレッダー4 導入事例:自立支援センターむく」の続編にあたる内容になっています。初めての方は、こちらからお読みになることをお勧めします。

前回、ディスクシュレッダー4の導入事例に登場していただいたのが2013年10月です。あれから2年ほど経ちますが、近況をお聞かせください。

<木村様>おかげさまでパソコンのリユース・リサイクル事業は順調に拡大しています。
大きな取り組みとしては、2013年の終わりから宮内庁と取引を開始いたしました。取引をはじめた頃は、宮内庁からのパソコン引取りやデータ消去作業が主でしたが、現在は、再生したパソコンを再び宮内庁に納品するという流れもできています。詳しくはお伝えできませんが、たとえば、皇族の方々が海外に行かれる際のノートパソコンの調達を依頼されることもあります。
こうした取引が実現できたのも、データ消去はもちろん、メンテナンスといった再生パソコンの作業工程が一般企業と比べても、遜色ないレベルで提供できているからこそだと思っています。また、東京都をはじめとする行政機関や民間企業との多数の取引での実績が、認められた結果だと自負しています。

リユースやリサイクルの作業現場に変化はありましたでしょうか。

<平野様>宮内庁との取引を始めた頃に、リユースのやり方を見直しました。従来は、使えるパソコンをそのまま再生するやり方でした。具体的にいうと、搭載しているHDDやメモリは使えるのであれば、そのまま使うという方法でした。それを改めました。
まず、引取ったパソコンからハードディスクやメモリを抜いて、それぞれ検査をします。ハードディスクの場合は、データ消去作業も行います。
次に、再生の過程となるわけですが、従来と違うのは、パーツをグレードアップして再生するという点です。もともと搭載していたものよりも容量の多いハードディスクやメモリに交換して、基本性能を上げるわけです。そうすることにより、Windowsもより快適に利用できるようになります。
また、これは従来から行ってきたことでもありますが、複数の壊れたパソコンから、使えるパーツを抜き出して、1台の完全動作するパソコンに仕上げるという方法です。
低価格化が進み、陳腐化が激しいパソコンではありますが、こうしたグレードアップにより、使い勝手が向上し、まだまだ現役として使えるようになるのです。

<海老原様>再生パソコンを再び宮内庁に納めるという流れが実現できた理由の1つには、こうした付加価値を高めたパソコン再生作業がありました。手間はかかりますが、故障率の低下につながるなど、お客様の満足度は高まっていると思います。

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データ消去に関する需要の変化についてはどのようにお考えでしょうか。

<木村様>今後、増えてくると予想されるメディアがSSD(Solid State Drive)です。振動に強いという特性を活かして、パソコンやタブレットといった情報端末への搭載が加速すると思われます。
それにともなって、データを持ち運ぶための記憶媒体が、CD-RWやDVD-RWからUSBメモリに移行するのではないかと予想しています。
学校の先生方から、すでにUSBメモリなしでは仕事ができない状況になっているという話を聞いたことがあります。東京都の学校では、利用が規制されているようですが、セキュリティロックがかかる製品であれば、紛失や盗難時の情報漏えい問題もクリアできるのではないでしょうか。
今やUSBメモリの主流は、2G/4G/8GBクラスから16G/32G/64G/128GBクラスへと移行しており、価格もどんどん下がっています。かつて大容量メディアと呼ばれたCD-RWやDVD-RWに代わって、安価でより大容量のUSBメモリを持ち歩けるようになります。
そうなると、いずれパソコンのように、USBメモリも大量に破棄される時代がくるのではないでしょうか。と同時に、USBディスクシュレッターのような消去ツールの需要も大きくなるはずです。
まだ規模は小さいのですが、すでに依頼元からUSBメモリを消してほしいという要望を受けることがあります。
今までは物理破壊等で対応していましたが、これからはUSBディスクシュレッダーを使ってデータ消去の作業を進めることになります。

そうした変化の中で、なぜUSBディスクシュレッダーをお選びいただいたのでしょうか。採用理由をお聞かせください。

運用コスト

<木村様>やはりライセンスですね。USBディスクシュレッダーは、今使っているディスクシュレッダー4や5と同じく買い切りのライセンスです。これは大きな魅力でした。メディアを購入すれば、その後は一切の費用負担なしに、何回でも何台でも消去ができる。作業を担当する当センターの利用者もそうした使い方に慣れているので、導入にあたっての心配がありませんでした。他社の製品では一台ごとにロイヤリティが必要となりますが、コスト的な負担は決して無視できません。大量廃棄の時代をむかえ、利用回数・利用台数無制限というライセンス形態はこれからの時代にそった製品と言えるのではないでしょうか。PC工房では戦力の1つとして考えられるツールです。

<平野様>むくの引取り業務では、データ消去を必要とするさまざまな情報機器が入ってきます。台数無制限だと、それらの機器で消去できるかどうかを気軽に試すことができます。たとえば、USBディスクシュレッダーの対応機種でないスマートフォンを接続したところ、内蔵のマイクロSDカードを認識して、消去することができました。このようなお試し利用は、ライセンスを消化するタイプの他の製品ではできません。お試し利用に気を遣わなくて済むのは大きな利点です。

操作性

<平野様>操作がわかりやすいのも採用理由の1つです。ディスクシュレッダーはキーボード操作でしたが、USBディスクシュレッダーから、Windows上でのマウス操作に変わりました。見た目は大きく違うはずなんですが、直観的に使えていて、作業を担当する利用者の方々にも好評です。

<木村様>インストール不要で使用できる点も評価しています。手軽ですね。

<平野様>USB接続のカードリーダーを使えば、メディアの種類を問わず、同時に複数個のメディアを消去できるのも、作業効率を上げるうえで重要なポイントでした。たとえば、SDメモリとメモリスティックを同時に消せたりするのは、良いところだと思います。

ログ機能の搭載

<平野様>ディスクシュレッダーと同様、消去ログ機能が搭載されている点も重要でした。パソコンの場合には、消去処理をしたパソコンやハードディスクの消去証明書をお客様にお渡ししています。その消去証明書を作成する上で、ログ機能は欠かせません。この点については、USBメモリでも同様だと考えています。

USBディスクシュレッダー導入前はどのようにしてUSBメモリやUSB接続ハードディスクのデータ消去を行っていたのでしょうか。

<平野様>基本的には導入前後で変化はありません。
外付けハードディスクやNASは、必ずケースからハードディスク本体を抜き出して、デュプリケータか消去作業用パソコンに付け替えてから消去作業を行います。消去作業用パソコンで用いるのは、USBディスクシュレッダーではなく、ディスクシュレッダー4や5です。
USB接続の外付けハードディスクは、USBディスクシュレッダーを使えば、手間をかけることなく簡単に消去することができます。しかしながら、USBディスクシュレッダーは使っていません。その理由は、パソコンの再生方法を変更したことにあります。
先ほどもお伝えしたように、2年ほど前からパソコンをそのまま再生するのではなく、パーツをグレードアップして再生する方法に変わりました。その過程で、機器管理の最小単位がハードディスク本体になりました。
そのため、ハードディスクの消去については、パソコン本体内蔵のハードディスクと外付けハードディスクを区別することなく、一台一台、管理番号のシールを貼ってデータベース化しています。シール貼付の工程があるので、必ず筐体から取りだす必要があるのです。
USBディスクシュレッダーが導入された現在でもこの流れは変わりません。
こうした理由により、ハードディスクの消去には、USBディスクシュレッダーではなく、ディスクシュレッダー4や5を使っているのです。

USBメモリの場合はどうでしょうか。

<平野様>USBメモリは物理的に破壊していました。ハードディスクと違ってUSBメモリに対応した破壊装置というのはないので、すべて手作業で行っていました。
再利用できないように筐体を割って、さらに錐(きり)でメモリ本体やコントロールチップに穴を空けるといった地道な作業です。すべて人力です。
USBメモリ内の基板はマテリアルとして価値あるものなので、あまり派手に壊すようなことはしません。あくまでも、メモリ本体とチップのところを集中的に破壊します。たいへん細かな作業の連続で、ケガの危険もあり、ほんとうに大変でした。
USBディスクシュレッダー導入後はこうした作業から解放されました。これまでUSBメモリのデータ消去は物理破壊しかありませんでしたが、導入後は、ソフトウェア消去を選択肢の1つに追加することできました。選択肢が増えるということは、依頼する側にとってもメリットだと思います。

USBディスクシュレッダーをどのような場面利用されているのか、あらためてご説明ください。

<平野様>実のところ、USBメモリやSDカードが単体で持ち込まれるケースは多くはありません。ほとんどの場合、寄付いただいたパソコンに紛れていたり、いっしょに同梱されていたりするケースがほとんどです。
パソコンに同梱されているUSBメモリだったり、デジカメに付属していたSDカードやCFだったりといった具合で、PC工房が引き取り時の確認中に偶然発見することも珍しくありません。
こうして引き取ったUSBメモリやSDなども、ハードディスクと同様にすべてチェックし、必要があればデータ消去を行います。
ここでUSBディスクシュレッダーの出番となります。先ほども説明しましたように、これまでは、極めてアナログ的な方法、錐(きり)で穴を空けるといった原始的な方法でしたので、ようやく、PC工房らしい再利用への道筋ができました。

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消去後、それらのメディアはどうなるのでしょうか。

<平野様>将来的には、売れるものは売っていきたいと考えていますが、先ほどもお伝えしたように、まだ数が少ないのでPC工房内でストックしている段階です。ただし、例外が1つあります。CFだけは、タイミングによってはいい値段がつくこともあるので、オークションなどで売りに出すようにしています。

これまでご利用いただいて、USBディスクシュレッダーへのご要望があればお聞かせください。

<平野様>

操作性

ある程度まとまった数のUSBメモリやSDカードが入荷した際に、連続して消去を行いたいときがあります。USBディスクシュレッダーでは、一度の消去が終わると、一旦ソフトを終了させなければなりませんが、この点を改善してほしいと思っています。
たとえば、作業終了時の選択肢に【再検索】ボタンを追加してほしいです。【最初に戻る】ボタンでもよいかもしれません。そうすれば、USBディスクシュレッダーの再起動で中断することなく、作業を継続できます。
USBディスクシュレッダーの起動の操作自体は簡単なのですが、やはり時間的にもできるだけ短縮して、作業の効率を上げたいと考えています。

速度

操作に慣れてくると、処理速度が体感的に遅く感じてしまうときがあります。基本的には、消去実行中の手間はないのですが、2GBぐらいのUSBメモリであればサクッと消してくれるといいかなって思います。速くなる分には困らないですから。

マイナンバー制度の施行など、企業が取り扱う個人情報を含む機密データを取り巻く環境は大きく変わろうとしています。そうした中、データ消去や廃棄への要望に変化はありますでしょうか。また、最近の動向についておしえてください。

<鈴木様>マイナンバーとの関わりがどのような形になるのかわかりませんが、今のところお客様から関連する要望というのはありません。マイナンバーの影響が出るには、もうしばらく時間がかかると思います。

<平野様>物理破壊の依頼が多く、ソフトウェア消去の依頼がまだ少ないという実感があります。
傾向として、個人だと「お任せします」といった方が多いので、ほとんどの場合、ソフトウェア消去で処理します。法人の場合は、一度、ソフトウェア消去を試されると、その後も継続して、ソフトウェア消去を選ばれるケースがあります。
一方、プライバシーマークを取得しているような企業だと、物理破壊を選択する傾向が強いように思います。ソフトウェア消去よりも物理破壊の方がセキュリティレベルが高いという思い込みがあるのではないでしょうか。
パソコン回収の流れを説明する際に、データ消去の方法の1つとして、物理破壊もあるという説明をすると、物理破壊を選択してしまうお客様が多いのも事実です。
ソフトウェア消去は、NSA推奨方式とか乱数書き込みとか、少し難しいイメージを持たれているのかもしれません。物理破壊は、使えない状態にする、再利用不可という点で分かりやすいのかもしれません。

<鈴木様>多くの企業や団体から、ぜひ有効活用してほしいというあたたかい声とともに、パソコンを寄付いただいています。
社内規定で物理破壊が決まっている企業や団体もあるため、物理破壊のご希望が多いのは確かです。しかし、その一方で、ソフトウェア消去でかまいません、という申し出をいただくことも珍しくありません。
そういった企業や団体には、使用済みのパソコンを実際に使える状態に再生して販売することで、障がい者の方々の工賃にしてほしい、という善意のお気持ちを持つ方が多いのだと思います。

<木村様>ハードディスクの再販はダメといったケースもあります。そういった場合には、ハードディスクだけを物理破壊し、パソコン本体には別のハードディスクを載せて再生します。このように、寄付いただく企業や団体のご希望に合わせて、柔軟に対応しています。

<平野様>物理破壊の場合、消去処理の時間が短く、見た目で分かりやすいというメリットはあるのですが、再利用できないという環境面でのデメリットもありますね。また、ハードディスクやUSBメモリを物理破壊しても、ディスクの磁気面やフラッシュメモリ内に記録されたデータ自体は、断片化しながらも残っているというリスク(※)があります。それぞれの消去方法のメリットとデメリットを考慮しつつ、希望に合った方法を柔軟に選択できるのは、お客様にとってもうれしいですね。

※ご参考
ディスクシュレッダー再入門
誤解5: HDDを物理的に破壊すると消える。

http://www.disksh.com/ds/introduction5.html

今後の課題をお聞かせください。

<平野様>おかげさまで、我々の知名度が上がるにつれて、パソコンや周辺機器の回収の依頼も増えています。そうした中で、今、課題となりつつあるのが、回収した多くの機器の再生処理をいかにして効率よく進めていくかということです。
データ消去から分解、再販といった流れをスムーズに進めたり、各作業過程の回転を速めたりするために、どのような工夫ができるのか、いつも考えています。実際の作業は当センターやPC工房の利用者の方々が行うわけですから、当然、作業の効率には個人差があります。スムーズに作業できる利用者もいれば、そうではない利用者もいるわけです。そういった状況下で、日々の作業が滞ることなく、また、どのような利用者であっても効率よく作業できるような枠組みを作っていくことが、我々職員の腕の見せどころだと考えています。
また、作業中に必要となる判断事項、たとえば、この機器は再生して商品にできるのか、それとも再生できないのでマテリアルとしてリサイクルにまわすのか、といった判断が迅速に行えるように、方針や判断基準を示す必要があります。そういった意思決定のスピードアップも課題の1つと言えます。
理想というか目標としては、我々職員がいちいち説明する必要がなく、どのような利用者が作業する場合であっても、作業が的確に行えるような環境を整えることです。たとえば、消去専用の棚を作って消去作業をライン化できれば、利用者の方にとって、より働きやすい場所になるのではないかと思っています。

<木村様>江戸川区立障害者就労支援センターの事業を江戸川区から受託することが決まっています。将来的には、PC工房で行っているようなパソコン再生の事業をそのセンターで行えないかと考えています。もし実現すれば、全国初の試みです。それに向けて、より高度なセキュリティ体制の実現のため、ISMS、ISO取得を目指しています。

【導入製品】 USBディスクシュレッダーPro

この記事は2015年11月の取材をもとに書かれたものです。
閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。


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